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音の3要素

音とは

音とは

「音は、あらゆる弾性体の中を伝わっていく波動で、慣性と弾性をもった媒質の中を伝わる空気の微小振動です。」と言われてもピンとこないでしょう。もう少し噛み砕いて説明すると、モノが振動したことで空気が押されたり引っ張られたりして、はじめて人間の耳で音として認識されます。大切なことは、音は媒質(力を伝えるもの)がなければ伝わりません。そのため、宇宙のような真空状態では音は伝わらないのです。逆に、空気中でなくても水中や鉄などでも音は伝わっていきます。

音の中でも「大きさ」「高さ」「音色」は聴覚の基本的な性質で、「音の三要素」と呼ばれています。それぞれについて説明します。

音の大きさ

音の大きさは、音のエネルギーを反映した心理量です。音の強さ(パワー)が増せば、音は大きく感じられます。しかし、音の強さが直線的に音の大きさに比例するわけではなく、音の強さの対数とよく対応すると言われています。そこで音の大きさを見積もる尺度として、対数尺度を適用した音圧レベルという指標が用いられます。単位はデシベル[dB]です。(←詳しくは「デシベルとは」で説明)

また、人間の聴覚の感度は周波数に依存しているため、同じ音圧レベルの音でも、周波数が違うと異なった大きさに聞こえます。図-1に、等ラウドネス曲線と呼ばれる、音の大きさの周波数依存性を表したグラフを示します。これは、縦軸に音圧レベル、横軸に周波数を表し、同じ大きさに聞こえる音を実線で結んだものになります。この図からわかることは、人間の耳は低い音ほど聞き取りづらく、3,000[Hz]~4,000[Hz]付近で最も聞き取りやすくなるということです。

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図-1 等ラウドネス曲線

40[dB]の1,000[Hz]の純音と感覚的に同じ大きさに聞こえる音を40[phon]と表し、40[phon]に対応する周波数感度補正を行った音圧レベルを騒音レベルと言います。騒音レベルと聴感感覚の対応は、表-1のようになります。

表-1 種々の環境の騒音レベル
騒音レベル 環境 身体に及ぼす影響
140dB(A) ジェットエンジン 肉体的苦痛
120dB(A) ロックバンド 聴覚としての上限
100dB(A) 鉄道ガード下
80dB(A) 地下鉄内
60dB(A) 静かな乗用車内 会話の範囲内
40dB(A) 図書館
20dB(A) ささやき声

参考文献:前川 純一他. 建築・環境音響学 第3版. 共立出版. 2011
     田中 俊六他. 最新建築環境工学. 井上書院. 2017
     岩宮 眞一郎. よくわかる最新音響の基本と仕組み[第2版]. 秀和システム. 2014

音の高さ

音の高さは「周波数」により決まります。周波数とは、1秒間の往復運動の数のことで、単位はヘルツ[Hz]、一般的な音の可聴域は20~20,000[Hz]となります。周波数が高いと高い音、周波数が低いと低い音となります。また、音の速さ$c$(音速)と周波数 $f$波長 $\lambda$には式-1の関係が成り立ちます。

\[ c = f \lambda \tag{1} \]

音速は気温によって決まります(式-2)。気温が15[℃]の場合、音速はおよそ340[m/s]です。

\[ c = 331.5 \left( 1+\frac{t}{273} \right) ^{1/2} \fallingdotseq 331.5+0.61t \tag{2} \]

音色

「大きさ」「高さ」と比べて「音色」は少し複雑です。JISなどの定義によれば「大きさと高さの同じ2つの音が、違う音として聞こえるとき、その違いが音色である」とされています。音色の特徴として多次元的な性質を持つことが知られており、対応する物理量も様々です。音の大きさや音の高さは、それぞれ「大きい―小さい」「高い―低い」といった一次元的な性質であったのに対して、音色の場合は、同じ音でも「明るい」「鋭い」「迫力のある」といった具合に、多次元的に評価することができます。また、物理量との対応も複雑で、大きさや高さのように、一つの物理量と対応するわけではありません。

音色の定義について先程述べましたが、この定義には少し注意点があります。それは「異なる楽器(ピアノとフルートなど)で”同じ高さ”の音を”同じ大きさ”で演奏したときに、違う楽器の音と聞こえる場合に、”演奏している楽器が違う”と判断できる性質が音色である」ということになります。しかし、同じ音や大きさでなくても楽器の違いを聞き分けることはできると思いませんか?そのため「音色とは、音の大きさ・高さ・持続感以外の、ある何らかの判断基準を用いて、2つの音を違うと判断できる性質のこと」との提言もあります。

音色には、音を聞いてそれが何の音であるか識別することができる識別的側面と、音の印象を「明るい」「濁った」というような形容詞で表現できる印象的側面の2つの面が存在します。
識別的側面の具体例は電話です。顔を見なくても、声だけ聴いて誰なのかを認識できるのは、この識別的側面が関係しています。音の識別ができるのは、「聞こえてきた音」と「記憶の中にある音」を照合する過程の働きによるものだそうです。
印象的側面は、音の印象を表す言葉だけでなく、「明るい」「柔らかい」のような、視覚や触覚などの他の感覚の印象を表す表現語のほうが多いことが特徴となっています。

参考文献:岩宮 眞一郎. よくわかる最新音響の基本と仕組み[第2版]. 秀和システム. 2014

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