知識ページ
KNOWLEDGE
DETAIL

音の性質

音とは

反射・吸音・透過

音が壁に入射すると、「反射する音」「吸収される音」「透過する音」に分かれます(図-1)。

【知識ページ】反射吸音透過概要図.png

図-1 反射・透過・吸音

壁に入射する音のエネルギーを$E_{i}$、反射する音エネルギーを$E_{r}$、吸収される音のエネルギーを$E_{a}$、透過する音のエネルギーを$E_{t}$とすると、これらには式(1)の関係が成り立ちます。

\[ E_{i} = E_{r}+E_{a}+E_{t} \tag{1} \]

よく”GWなどの吸音材を設置すれば遮音性も上がる”と思っている方がおられますが、この考えは間違っています。この理由について今から説明していきます。

まず、吸音率$\alpha$は式(2)で表されます。すなわち音の入射エネルギーに対する反射する音以外のエネルギーになります。吸音率が高いと、室内での反射音を抑えることで、響きの長さを短くすることができたり、話声の聞き取りやすさを向上させたりすることができます。

\[ \alpha = \frac{E_{a}+E_{t}}{E_{i}}=\frac{E_{i}-E_{r}}{E_{i}} \tag{2} \]

続いて、透過率$\tau$は音の入射エネルギーと透過するエネルギーより、式(3)で表すことができます。透過率が大きいほど音が透過します。(遮音性能は低いということになります。)

\[ \tau = \frac{E_{t}}{E_{i}} \tag{3} \]

これをデシベルで表したもの(式(4))を音響透過損失($TL$)といい、透過損失が大きいと遮音性能が優れているということになります。

\[ TL = 10\log\frac{1}{\tau}=10\log\frac{E_{i}}{E_{t}} \tag{4} \]

単一の材料で構成される壁の遮音性能は、「質量則」と呼ばれる法則が成り立つことが知られており、材料の面密度と対象とする音の周波数に比例します。壁に垂直に入射する音の場合、式(5)により求めることができます。

\[ TL = 20\log{f・m}-43 \tag{5} \]

ここで、$f$は周波数[Hz]、$m$は材料の面密度[kg/cm2]です。式(5)からわかるように、周波数や材料の面密度が2倍になれば、透過損失$TL$は6[dB]増加します。

吸音率と透過率に関して説明しましたが、極端な例を考えてみましょう。室内の窓を開けた場合の吸音率と透過率について説明します。まず、開口の吸音率は、入射するエネルギーに対する吸収されるエネルギーと透過するエネルギーで表されるので、吸音率 $\alpha=1.0$ となります(開口部で反射する音は存在しない)。
では、透過率はどうなるでしょう。透過率は、入射するエネルギーに対する透過するエネルギーで表されるので、開口の場合は透過率 $\tau=1.0$ となり、全ての音が透過することを意味します。すなわち遮音性能としては効果なしということになります。
この例からわかるように、吸音率が大きくなれば遮音性能も大きくなるということではありません。”吸音と遮音は別のもの”そういった認識を持っていただければと思います。

吸音率の測定方法については、「残響室法」と「音響管法」という2つの測定方法がありますが、一般的に音響設計で用いられる吸音率は残響室法吸音率です。測定方法は、残響室と呼ばれる部屋で、試料を設置していない状態の残響室の残響時間試料を設置した場合の残響室の残響時間の差から吸音率を求めます。ただし、残響室法吸音率を測定する場合、「面積効果」という図-2に示すような試料周辺で発生する音圧勾配により音波が試料へ流れ込むことによって、本来より吸音率が大きく評価されるという注意点があります。「吸音率」であるのに数値が1.0を超えることがあるのは、この現象によるものです。

01-02-02.jpg図-2 面積効果

参考文献:前川 純一他. 建築・環境音響学 第3版. 共立出版. 2011
     田中 俊六他. 最新 建築環境工学 改訂4版. 井上書院. 2017

拡散と散乱

建物の室内では、特に広い空間で反響(エコー)が生じたり、ある場所で音が集中したりする特異現象(音響障害)が発生することがあります。この音響障害を予防するためのポイントが、拡散散乱です。

室内音響における拡散とは一般に次の二つの評価を行います。

①音のエネルギーが、室内全体で均一に分布している

②室内のどの点においても、音の進行方向はあらゆる方向に一様である

これら二つの条件を満たした室内を「拡散音場」といいます。この概念を近似的に実現するために床・壁・天井を全て反射性の材料で仕上げた部屋を残響室といい、材料の吸音率の測定や遮音性能の測定などに利用されます。

一般に使用される室内でも拡散がいいことが好まれますが、普段私たちが使用する室内は拡散がいいかと言われると、そうでもない場合もあります。例えば、天井と床、両壁面などが互いに平行した反射性の壁である場合、拍手・足音などがこの平行面の間を多重反射して、”ピチピチ・・・”、”プルル・・・”など特異な音が聞こえることがあります。このような繰り返しの多い反響を”フラッターエコー”と言い、特に日光東照宮の本地堂では、拍手の音が天井に描かれた竜が鳴くように聞こえることから”鳴竜”として世に名高いですね。
天井面一面に岩綿吸音板などの吸音材を設置し、壁や床などの境界は反射性材料とした場合、天井に当たる音は吸収されて減衰していきますが、天井に当たらない音はいつまでたっても減衰せず残り続けます。そうなると、音響設計時に予測した残響時間と実際に測定した残響時間で大きな差が生じるだけでなく、生活している中で音の響き方に違和感を覚えるなど、不快感につながります。

続いて散乱について説明します。音は壁などに当たって反射する際に「鏡面反射」をしますが、反射面に細かい凹凸や溝をつけることで鏡面反射だけでなく散乱する反射波も生じます。散乱は簡単に言うと、音が壁などに入射した際に「鏡面反射をしない成分」のことです。散乱する反射音を増やすことで、強いエコーの発生を防ぐことができます。

まとめると、拡散は「室内全体の音響エネルギーや音の進行方向を評価するもの」に対して散乱は「音が壁に当たった時に起こる現象」です。紛らわしいですが、室内音響を評価するうえで大事なことなので両者を混同しないようご注意いただきたいと思います。

参考文献:前川 純一他. 建築・環境音響学 第3版. 共立出版. 2011
     日本音響学会. コンサートホールの科学 形と音のハーモニー. コロナ社. 2012

屈折・回折

一般的に音は直進しますが、音は曲がる性質も持っています。

一つは、音が異なる媒質間を伝わる際に、経路が折れ曲がる屈折という現象です。屈折は、音が伝わる媒質が異なる場合や媒質間の温度差がある場合に生じます。そのため、空気中の音でも温度差が違うと音は曲がって伝わります。冬の寒い日に、遠くの音がよく伝わるのは屈折のためです。

二つ目は、障害物を回り込むように伝わる回折という現象です。これは、壁などの障害物があったとしても音が回り込み、音を全て遮ることはできないことになります。また回折効果は、波長の長い低い周波数の時に起こりやすく、波長の短い高い周波数は回折しにくいという特徴があります。

参考文献:前川 純一他. 建築・環境音響学 第3版. 共立出版. 2011
     岩宮 眞一郎. よくわかる最新音響の基本と仕組み. 秀和システム. 2014

干渉・うなり

干渉とは波の重ね合わせのことです。2つの音が同時に伝わった場合、ある点の音圧はそれぞれの音が単独に伝わった時の振幅の和をとればいいことになります。したがって、同位相で伝わった場合は振幅は大きくなり、逆位相で伝わった場合は振幅は小さくなります。

うなりは周波数がわずかに異なる2つの純音を同時に発生させたときに音波の干渉によって聞こえる、大きさの周期的変化のことです。1秒間のうなりの回数は2つの音波の振動数の差になります。

参考文献:前川 純一他. 建築・環境音響学 第3版. 共立出版. 2011

その他の性質・現象

〇マスキング効果

聞きたい音が存在しているとき同時に騒音が存在すると、騒音が聞きたい音を聞こえなくする、もしくは聞こえにくくする現象のことです。日常の身近な具体例としては「部屋でテレビを見ているときに、電車が通るとテレビの音声が聞き取りにくくなる」などがあげられます。この時、騒音(例では電車)をマスカーと呼び、高い音は低い音に妨害されやすいといった特徴があります。また、大きな音を聞いた後に小さな音が聞こえにくく感じるのもマスキング効果です。これらは騒音のため耳の感度が鈍くなり、最小可聴域(聞き取ることができる最小の音の大きさ)が上昇したことが原因であると考えられています。

参考文献:前川 純一他. 建築・環境音響学 第3版. 共立出版. 2011
     岩宮 眞一郎. よくわかる最新音響の基本と仕組み. 秀和システム. 2014

お問い合わせ

CONTACT

建築音響、騒音対策、電磁波シールド、道路・鉄道防音、騒音・音響・電磁波環境コンサルタントに関するお問い合わせは、
お電話またはメールフォームより受け付けております。
検討段階でも、まずはお気軽にお問い合わせください。